ゼロクエスト ~第2部 異なる者
私たちは大通りに差し掛かる所にまで歩いてきたのだが、その先は人で溢れ、中心部付近では更に人集りができていたのである。

いくら温泉で賑わっているとはいえ、通りの中央付近に人集りができているのはただ事ではない。

「何っ!?
こ、これは……!」

集団を見たアレックスが突然、驚愕の表情を浮かべた。

「エド、今だ! 今こそエリスにアレをっ!!」

「了解です〜」

エドは阿吽(あうん)の呼吸でそう言うと、私の手をガシッと力強く掴んできた。昨晩アレックスがレクチャーした方法で握ってきたのである。

「うむ、これならばもうはぐれることはないだろう」

彼は顎を擦りながら目を細め、私たちの繋いでいる手を満足そうに一人、眺めていた。

「………」

もう、口を開くのも面倒臭い。

「ちょっと失礼」

私たちの横を丁度通り過ぎようとしていた男性を、ディーンが呼び止める。

「! な……何でしょう」

一般の村人らしい中年男性は彼を見ると、一瞬ビクッと身体を震わせた。そして先程の幼児と同様に、みるみる怯えた表情に変わっていく。
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