ゼロクエスト ~第2部 異なる者
第6節 帰還
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「やっぱり〜憶えていないのですか〜」
私たちはアクニカ村にある、村で一番大きな病院の5階の一室に軟禁されていた。
というと何だか物騒な感じもするが、単に一つの病室へ関係者全員が集められ、扉の外では二人の騎士が見張りのように立っていただけである。
「うむ、そうなのだ」
アレックスは腕を組むと置かれているベッドに腰を掛け、神妙な面持ちで目を瞑った。
あれからまだ4日しか経っていなかったが、彼の腕はもう殆ど完治しているという。
本来なら全治3ヶ月くらいの怪我らしい。
それがルティナの施した応急処置と、精霊の加護能力によって『ヒトの術に効きやすい体質』なため、治りが早かったのだ。
「強力な気配のある場所で、エリスの姿を確認したところまでは憶えているのだが……その後のことが如何せん、サッパリと思い出せないのだ」
「僕なんて〜ルティナさんを追っていたところまでは〜憶えているのですが〜。
そういえばルティナさんも〜途中からの記憶がないと〜仰っていましたよね〜?」
「あ? ……ああ。そうだ」
光のあまり届かない壁隅に凭れていたルティナが、初めてこちらに顔を向けた。
あの時に多少瘴気に侵されてしまったとはいえ、意識がハッキリしていたのは私だけだった。