ゼロクエスト ~第2部 異なる者
◇ ◇ ◇
「なまくら、だな」
ぴくっ。
「これもなまくらだ」
ぴくぴくっ。
「やはりなまくら、か」
ぴくぴくぴくっ。
「アレックス、いい加減にしなさいよ。
臨時で使うだけの剣なんだから、何だっていいじゃない」
私はカウンター奥に座っている、店の主人を気にしながら注意した。
その呟きを聞く度に、店主が口端を痙攣させていたからだ。
私は先程からそのことに気付いていた。
だが。
「お嬢ちゃん、その『何だっていい』というセリフは、聞き捨てならないね。
ウチも趣味で売買をしているわけではないんだよ。
ちゃんと商売として、取引をしているつもりなのだがね」
頭の禿かけた年配の主人が、営業スマイルを浮かべながら言ってきた。
口調と顔はたしなめるように穏やかだったが、雰囲気は完全に怒っているようにも見える。