ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「! 否、リアのことだ。例え上手く説明したとしても、聞き入れてもらえるかどうか……。
ここはやはり鍵と同様、彼女の気付かぬうちに、元の場所へと戻しておくのが得策か。
さすれば、村や俺も平穏無事な日常が続けられ、万事円満に解決できるではないか!」

「ははは、何言ってんだ。リアも俺も、お前が剣を持ち出したことを知っているんだぜ。
そのまま隠し通すのは無理だろ」

ディーンが軽やかに笑いながら、アッサリと否定する。

途端アレックスの表情が、またもや曇りだした。

「むむむ…そうか。ではどうすれば良いのだ。
彼女の気を鎮め、更には逆鱗に触れぬ方法など、果たして有り得るのだろうか」

「取り敢えず、リアには正直に話すんだよ。
それにこのくらいなら村の鍛冶士でも、修復が可能だろう」

ディーンはアレックスの重苦しい空気を振り払うかのように、軽く肩に手を置くと、爽やかな口調のままで言葉を続けた。

「まあ宝剣の修復だから、多少の値は張るかもしれないけれど。
このままの状態で戻したりしたら、余計に彼女を怒らせるだけだからな。
そのためには一刻も早く、新たな武器を手に入れ、村へと戻ることだ。
前にも言ったかもしれないが、まだ傷の浅いうちに謝っといたほうが、お前や村のためなんだぞ」

そう返されたアレックスは、諦めたかのように嘆息すると、肩を落として静かに目を閉じる。

「やはりそれが、今一番の良策ということか。
実に簡単で単純ではあるが……早急に包み隠さず謝罪の言葉を述べるのならば、或いは彼女の心を動かすことが、できるのやも知れぬな」

(だからリアって一体、どういう女の子なのよ)

彼女の話を聞く度に、ますます謎が深まっていくような気がする。
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