ゼロクエスト ~第2部 異なる者
―――――ッいや!
だがっ。しかしッ!!
私は直ぐに思い直した。
自ら『そのこと』を言いさえしなければ、絶対に彼女にはバレたりしないはず!!!
アレックスもその時のことを憶えていないと言うし、証拠もない。
このままアレックスに罪をなすり……いやいやいや、これ以上のことは、私の口からは何も言うまい。
元はといえば、彼が宝剣を盗んだことが発端だ。
それに話を聞けばアレックスは、このような事態には大分慣れていると言うし。
だからこのまま口を閉ざしてさえいれば、被害は最小限(アレックスだけ)に食い止められるはずだ。
これから会いに行く私に、とばっちりが向くことはないだろう。
そして全てが丸く収まるはずッ!
―――――多分。
私が固くそう決意している間にも、アレックスは真剣な表情で黙々と剣を選別していた。
先程とは比べものにならないほどの集中力だった。
ディーンがいつもの調子で使った、『口先だけでアレックスを丸め込む作戦』が効いているようだ。