ゼロクエスト ~第2部 異なる者
第1章 暗殺者(エリス編)
第1節 道程
「火炎砲弾(ファイア・バル・カノン)」
私は敵に火の弾を放つ。と同時に、ディーンも動いていた。
「水爆泡撃(ヴァッサ・ビュル・ボム)」
ディーンの放った水泡が、私の火弾に当たると爆発した。辺りには濛々と煙が立ち込めている。
敵――ゴブリンはその煙で完全に囲まれ、怯んだようだった。その場で動きが止まったのだ。
その瞬間、アレックスが透かさずその中へと突っ込んでいった。
徐々に晴れてくる煙の中には佇むアレックスと、小さなオジさんのような容姿をしているゴブリンが数匹ほど地面へ横たわっていた。
煙の中は視界が悪く相手の姿は見えないが、それを作る前に相手の位置さえ特定できれば倒すのは容易なことだ。
「取り敢えずこの辺は、これで最後かしら」
私は周囲を見回しながら呟いた。
辺りは暗闇であったが、光属性の灯りを2〜3体ほど点けていたために、この場所だけ少し明るくなっている。
「それにしてもこの辺り、町が近いわりには魔物がやたら多いわね」
魔物というのは大抵が森や洞窟、人間や他の魔物が住まなくなった廃墟などを好んで根城にする傾向にある。つまりヒトと魔物とでは住処に若干の違いがあり、殆ど重複はしないのだ。
といっても魔物が人里へ下りてきては町村を襲撃したり、旅人が街道を歩いていると襲われたり、そういったケースもよく聞く話だった。
そのため、各町村に配置されている王国統轄直属機関『ギルド』が、他術士たちと協力し、討伐隊を編成するのである。そしてそれによって増えた魔物を一掃するのだ。