ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「誤って? そのようなことがあるのか??」

「皆、自分を守ることに必死だからな。冷静さを欠くことだってあるんだ。
思い掛けない者に攻撃されたら誰だって、一瞬の判断力が鈍るだろ。流石のお前でもそんな時には、完全に避けられるとは思えないのさ。
しかもお前の場合、掠っただけでも即死にはなるだろうし」

(掠っただけで即死?)

ディーンは一見尤もらしいことを言っているようだが、この前の洞窟での出来事を考えれば、掠っただけでは即死にまで到らなかったと思う。

私がアレックスに痺れを感じる程度の弱い術をかけた時には、目を覚ましただけで死ぬようなことはなかったし。

しかしエドはこのことに気付いていないのか、追い打ちをかけるように口を挟んだ。

「そうですよ〜アレックスさん〜。貴方がここで死んでしまったら〜一体誰が魔王を倒すというのですか〜?」

「ま、そういうことだ。この戦いは俺たちを信じ、任せてほしい。
今お前に死なれたら世界の……いや、この世の森羅万象生きとし生けるもの全てに対しての、莫大な損失になってしまうからな。
この前も言ったように今のお前は、己を鍛え直す時期なんだ。自分が『英雄』だという自覚を持て。それが一番だ」

ディーンの言葉でアレックスは、まだ何かを考え込んでいる様子だったのだが。

「成る程、言いたいことはよく分かった。どうやら俺には、英雄としての自覚が足りなかったようだな。
今回は君を信じて身を退こう」

ようやく折れてくれた。

(アレックスを説得するのって、凄く疲れるわ)

私が説得したわけではないが、この遣り取りを見ているだけでかなり疲れてしまった。

ディーンはなんて忍耐強いのだろう。尊敬してしまう。
< 42 / 298 >

この作品をシェア

pagetop