ゼロクエスト ~第2部 異なる者
私が考え込みながらアレックスへ振ると、今まで瞑想していた彼は静かに目を開けた。

「俺は辞退する」

「え、どうして?」

「今の俺には他に成すべき事がある。このような時にこそ魔王を倒すべく、精神と肉体を鍛えねばならないのだ」

アレックスの言いたいことは何となく理解できた。

私も温泉はかなり魅力的であったが、この間に少しでも自身の鍛練を積んでおきたいと思っていたところだった。

「私も今回はパスするわ。今は温泉でのんびりするより、少しでも力を付けたいから」

「そうですか〜それは残念です〜」

エドは肩を落として名残惜しそうに温泉マップを眺めると、やがてのろのろと懐へ仕舞い込んだ。その表情はいつもと違って暗い。余程この村の温泉を楽しみにしていたのだろうか。

「それにしてもこの村には、美声効果のある温泉があるのね。道理でエドみたいな芸術士を、結構見かけると思ったわ」

今まで通ってきた町村でも見かけることはあったが、すれ違う確率はこれほど高くはなかった。
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