ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「見張られて……てあんた、只でさえ目立つんだから仕方ないんじゃないの」
道行く人々――特に女性は擦れ違いざまに、必ずアレックスのほうを振り向くのである。いつも誰かに監視されているようなものなのだ。
「何を言うか。このように謙虚で人畜無害なこの俺の、何処が目立つというのだ」
私の位置からでは背後にいる彼の表情は全く見えなかったが、声のトーンから察するに、恐らく心外だとでもいうような顔付きになっていることだろう。
長身な上に美形である。ただそこへ佇んでいるだけでも目立たないはずはないのだが、本人にその自覚がないというのは恐ろしいことだ。
しかし殺気というのは気になる。
私には何も感じられなかった。
とはいえその緊張感は、腕の中にいる私にも伝わってきていた。
私は念のために意識を辺りに這わせてみる。
刹那――。
アレックスに抱えられ、私は一緒に奥へ飛んでいた。
素早く体勢を立て直してその方向を見ると、短剣(ダガー)が3本地面へ突き刺さっている。私たちがさっきまで立っていた場所だ。
疑問に思う間もなく、その上へ覆い被さるように黒い影が落ちてきた。
「逢い引きの最中に……よく俺の攻撃が躱せたな」
唸るような声とともにゆらりと揺れると、それは細長く上へ伸びた。
道行く人々――特に女性は擦れ違いざまに、必ずアレックスのほうを振り向くのである。いつも誰かに監視されているようなものなのだ。
「何を言うか。このように謙虚で人畜無害なこの俺の、何処が目立つというのだ」
私の位置からでは背後にいる彼の表情は全く見えなかったが、声のトーンから察するに、恐らく心外だとでもいうような顔付きになっていることだろう。
長身な上に美形である。ただそこへ佇んでいるだけでも目立たないはずはないのだが、本人にその自覚がないというのは恐ろしいことだ。
しかし殺気というのは気になる。
私には何も感じられなかった。
とはいえその緊張感は、腕の中にいる私にも伝わってきていた。
私は念のために意識を辺りに這わせてみる。
刹那――。
アレックスに抱えられ、私は一緒に奥へ飛んでいた。
素早く体勢を立て直してその方向を見ると、短剣(ダガー)が3本地面へ突き刺さっている。私たちがさっきまで立っていた場所だ。
疑問に思う間もなく、その上へ覆い被さるように黒い影が落ちてきた。
「逢い引きの最中に……よく俺の攻撃が躱せたな」
唸るような声とともにゆらりと揺れると、それは細長く上へ伸びた。