ゼロクエスト ~第2部 異なる者
これは吟遊詩人などの芸術士がよく使う、支援系の術だ。
吟遊詩人の場合、補助術といえば敵味方問わず、唄の聞こえる範囲内のものであれば――クラスなどの制約は抜きに考えて――誰にでも効果が及ぶ。
しかしこの支援系だけは対象者一人にしか効力がないという、特殊な技なのだ。
恐らく自身の体内エネルギーを他者に分け与えるという、他には例を見ない能力が関係しているのかもしれないが、私はその仕組みについて詳しくは知らない。
エドは私に言われるまでもなく、事前に支援系の術を唄い始めていた。
唄い始めた時にその系統の術だということは、私にも瞬時に分かった。何故ならこの状況で芸術士が使う技といえば、それ以外考えられないからだ。
しかしレグは強化されたシールドに阻まれていても、絶え間ない攻撃を繰り出してきている。私たちはそれに押され、じりじりと後退していった。
エドも後ろから私を支えているが、この男の力押しは半端ではなかった。二人がかりでどうにか耐えているほどだ。
だが私の消耗も激しい。体力と精神力が大量に削られていくのである。
私はこれほどまでに短時間で消耗するような激しい戦い方を、今まで経験したことがなかった。このままいけばこちらが不利になるだろう。
「エリスさん〜、耐えて下さい〜」
いつもの気の抜けるようなエドの声で、私は本当に気が抜けてしまった。
「! しま…っ」
気付いた時にはもう遅かった。
鈍く銀色に光る先端が、直ぐ目の前にまで迫ってきていたのだ。
吟遊詩人の場合、補助術といえば敵味方問わず、唄の聞こえる範囲内のものであれば――クラスなどの制約は抜きに考えて――誰にでも効果が及ぶ。
しかしこの支援系だけは対象者一人にしか効力がないという、特殊な技なのだ。
恐らく自身の体内エネルギーを他者に分け与えるという、他には例を見ない能力が関係しているのかもしれないが、私はその仕組みについて詳しくは知らない。
エドは私に言われるまでもなく、事前に支援系の術を唄い始めていた。
唄い始めた時にその系統の術だということは、私にも瞬時に分かった。何故ならこの状況で芸術士が使う技といえば、それ以外考えられないからだ。
しかしレグは強化されたシールドに阻まれていても、絶え間ない攻撃を繰り出してきている。私たちはそれに押され、じりじりと後退していった。
エドも後ろから私を支えているが、この男の力押しは半端ではなかった。二人がかりでどうにか耐えているほどだ。
だが私の消耗も激しい。体力と精神力が大量に削られていくのである。
私はこれほどまでに短時間で消耗するような激しい戦い方を、今まで経験したことがなかった。このままいけばこちらが不利になるだろう。
「エリスさん〜、耐えて下さい〜」
いつもの気の抜けるようなエドの声で、私は本当に気が抜けてしまった。
「! しま…っ」
気付いた時にはもう遅かった。
鈍く銀色に光る先端が、直ぐ目の前にまで迫ってきていたのだ。