ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「え、そんなこと可能なの?
普通こういうのって、術を掛けた張本人を倒さない限りは破れないっていうのが、セオリーでしょ」

「でも他に方法があるかもしれないですし〜。ここでじっとしていても〜無駄に時間が過ぎていくだけです〜。
僕たちにだって〜やれることがあるはずですよ〜」

いつものように陽気な音楽を鳴らしながら、エドはそのようなことを軽く言ってきた。

だが彼の言うとおりでもある。ただ見ているだけの私たちだが、もしかしたら今できることがあるのかもしれない。

私が思い直して周囲の壁や地面などを調べていると、大通りを見詰めながら顎に手を置き、真剣な表情で何かを思案している様子のアレックスの姿が目に入った。

「アレックスもひょっとして、この結界を破る方法でも考えているの?」

「うむ……こちらからは向こう側が見えているというのに、何故ここを通った物が遠く離れた後方へ移動できるのか、そのカラクリを解いている最中なのだ」

(この男……さっきは理解しているようなことを言っておきながら、本当は全く理解できていなかったというわけなのね)

私が半眼で見詰めていることに全く気付いていない彼は、何を思ったのかおもむろに大通りのほうへ歩き出した。自分でも実際に体験して、確かめてみようとでもいうのだろうか。

彼の身体がそこへ入りかけた時、バチッという何かの弾けるような音が聞こえてきた。

と同時に、身体上には水の紋様も浮かび上がった。
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