ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「まず一つ目は、あんたの持っているソレ、返して貰おうか」

「へ? ……あ、ああ、コレね」

言われた私は、自分が小脇に抱え込んでいる物に視線を落とした。それは最初にルティナから預かっていた、饅頭の入った箱である。

「まさかまだ預かってくれていたとはな。普通あの状況だったら、途中で捨てているぞ」

「そりゃいきなり渡された物とはいえ、一応他人の物だし。勝手に捨てるわけにもいかないでしょ」

有無を言わせず人に頼んでおきながら、そんな言い方をするなんて。

私は明らかにムッとして、箱をルティナに突っ返した。

本当は捨ててしまおうかとも思ったのだが、結局ずっと持っていたのだ。

「ああ、それはすまなかった。これは謝礼だ」

ルティナは直ぐに謝ると、私の手の平へ饅頭を3つ乗せてきた。彼女が予想外の行動をしたので、私は呆然とそれを見詰める。

ルティナって、もしかして。

実はわりと『良い人』だったりするのだろうか。

外見だけで判断するならば愛想の欠片もなく、一見恐そうな印象ではあるのだが。

「そして二つ目は、あの魔物たちだ。彼奴らはギルドでも指名手配されている」

「え、そうだったの?」

指名手配をされている魔物だというのであれば、それを専門職にしている彼女がこの機を逃すはずはないだろう。

しかし疑問なのは、何故そのような魔物が私たちを狙っているのか、ということだ。
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