ゼロクエスト ~第2部 異なる者
第2章 追跡者1(ルティナ編)

第1節 取引

それは近隣町で聞いた噂が発端だった。

『魔物が集まり始めた。討伐隊が近々編制されるらしい』

それがギルドを中心に流れていたのだ。

魔物ハンターであるあたしは当然の如く、その現場であるアクニカ村へ向かっていた。

だが途中で不意を突かれ、魔物に襲われてしまう。

そして魔物の口からその名を聞くことになろうとは、思ってもみなかったのだ。





◇ ◇ ◇





「貴様の目的――ゼリューを殺したいのだろう?」

襲ってきた魔物の女はあたしの顎を持ち上げると、耳元でこう囁いてきた。

それを聞いた瞬間、沸騰するのかと思うくらいに全身の血液がざわめき立った。


ゼリュー。


あたしが長年追い求めている魔物だ。

そしてヤツだけはあたしの手で、どうしても葬らねばならない。

それが魔物ハンターという職業を選んだ理由でもあった。

「貴様、一体何者だ?」

あたしは目の前にいる、真紅の瞳を持つ魔物の女を睨み付けた。

真紅――。

そう、ヤツの眼も真紅だった。

それによく見ればこの魔物、顔立ちがヤツに似ているではないか。
< 80 / 298 >

この作品をシェア

pagetop