ゼロクエスト ~第2部 異なる者
その者たちが戦っているということは、この付近にいる魔物もその場所に集まっているはずだ。

つまりあたしがこのまま素通りしても、何の問題もないということになる。

討伐隊などといった特殊な状況を除けば、部外者が戦闘中の他パーティに途中参戦することは殆どない。

個々のパーティには、きちんとした連携(ルール)があるのだ。危機的状況に陥っているのならともかく、途中で乱入すれば、それを崩してしまうことになりかねない。

そんなわけであたしは、いつもの通りこの場を立ち去ろうと思ったのだが、途中で何気なくそちらのほうへ振り向いていた。

数匹のゴブリン相手に戦っていたのは、4人のパーティだった。

格好から判断すると、剣士1人に精霊術士2人、そして楽器らしきものを振り回しながら敵に追いかけられている芸術士が1人だ。

「……ん?」

(剣士、精霊術士、芸術士?)

あたしはこの組み合わせに引っ掛かりを覚え、立ち止まった。

『――その者たちは剣士の男、精霊術士の女に竪琴を弾いていた……芸術士の男、だったか』

昨日サラから告げられた、3人の特徴を思い出していた。

更に奴は「剣士の男は妾から見ても大層、眉目秀麗であるぞ。貴様の美的感覚が妾と近似しているというのであれば、直ぐにでも分かるだろう」とも言っていた。

そのことを思い出したあたしは木陰から目を細め、剣士の顔を改めて凝視した。
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