ゼロクエスト ~第2部 異なる者
しかし全てを狩るのは大変な労力だ。だからあたしはいつも、賞金首以外の魔物には目を瞑ってきた。

それにあたしの能力では、大勢の中から一つだけを特定することができない。

つまり人がこのように大勢いた場合、その中のどの人間が魔物であるのか――そこまでは判別できないのだ。

あたしは辺りに素早く視線を配っていた。

側を通り過ぎようとしていた一人と不意に目が合うと、相手のほうがあからさまに、ビクリと身体を震わせていた。いくらか顔色も青ざめて見えるようだ。

直感の働いたあたしはその人物から視線を逸らさずに、真っ直ぐ近付いていく。

恐らくあたしの形相は、伝説として語り継がれている魔王のように険しかっただろう。

当然男は逃げる。あたしもそのまま追いかける。

互いの距離は保ったままだ。そして眼の違和感も消えてはいない。

人混みを掻き分けながら、あたしはその男をしつこく追い続けていた。

「あんた、何故俺を追いかけてくる!?」

とうとう我慢の限界にきたのだろう。男は後ろを振り返ると、速度を緩めることなく怒鳴ってきた。

「貴様が逃げるからだ。それに貴様の正体、全てお見通しなんだよ!」

「やはりそうか!
その隻眼は……お前があの『キラー・アイ』!!」

あたしの通り名を知りながら逃げている、この男。

間違いない。魔物だ。
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