ゼロクエスト ~第2部 異なる者
しかしまさか、あたしが試しにちょっとカマを掛けてみただけで、簡単に引っ掛かってこようとは。

この分かりやすい反応は恐らく、賞金首に掛けられるほどの大物ではないからだろう。一般的な中位クラスだ。

奴が大通りへ出た辺りでようやく捕まえると、予め術の施された手刀を首の付け根付近へ、問答無用でぶち込んだ。

瞬間、かなり驚いた顔付きをしていたようだった。

奴にしてみれば賞金首でもない自分が、まさかこのような公道のド真ん中で攻撃をされるとは、露ほどにも思っていなかったに違いない。

騒ぎを大きくすれば、先程見かけた数名の騎士たちが直ぐに飛んで来て、あたしの手柄が横取りされる。

それに魔物にしてみても、あまり目立った行動は避けたいはず。

何故なら奴が何の目的もなしで、人間に変化するとは思えないからだ。

中位クラス以上はプライドが高く、日頃から嫌悪感を抱く人間に、自ら進んで擬態する者など殆どいない。

大抵の魔物は自分より能力の強い者の命に従って、人間に化けているにすぎない。恐らくは奴も同じだろう。

だから奴は人混みの中、こちらに攻撃を仕掛けてはこなかったのだ。

それなのに何故あたし自らが、そのような暴挙に出たかといえば、答えはただ一つである。
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