ただ空回り。
「先生、なんだって?」
席に戻ってきた私に入学してから知り合った、
野口遥歌[のぐちはるか]が通りすがりざまに聞いてきた。
席が前後なので座ってから、
「憶えてない」
と答えた。
その答えを聞き、ハルの隣の席の山中海翔[やまなかかいと]が笑い始めた。
「憶えてねぇとかありえねぇ~!さっきまで話してたじゃねぇかよっ」
「憶えてないものは憶えてないの!」
反撃するようにそういうと、「超おもしれぇ」と海翔は笑い続けた。
「まじでオモロい~。なぁ~ヨッシー?」
海翔が吉永くんに問う。
ゆっくりと窓から視線を外し、海翔を見る。
「は?あぁ、うん?」
全く話を聞いていないようだった。
ちなみに、海翔以外の男子も吉永くんのことをヨッシーと呼ぶ。
私はそれを聞いて何度、スーパーマリ○を思い出しただろうか。
あの赤いおじさんのそばにいる緑色の物体に全く似ていない、隣の住人を一瞬チラリと見てため息をもらした。