恋人ごっこ


 「何言ってるんですか?大体、先輩、あたしのこと知らないですよね?」


 意外にも冷静だった。それに口は達者なほうだ。



 「知ってるよ、浅間唯ちゃん。憎たらしいアイツが大切にしてんだからさー」



 憎たらしい?
 大切って・・・?


 先輩はふっと笑うとあたしの両手首を掴み壁に押し付けた。


 いつも以上に屋上がひんやりとする。




 「先輩・・・!やめてください・・・」


 頭が真っ白になる。
 あたしは怯えることしかできなかった。


 「やめないよ」


 そう言った先輩の表情は恐ろしいほど美しく感情がない。



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