恋人ごっこ
すると、涙を流しながら立ち尽くしていた女の人が文哉を止めた。
「明日美さん、離してください!」
明日美さん・・・?
あたしは全く状況を飲み込めずにいた。
そして文哉はあたし目を向けた。
その瞳は怒りと哀しみに満ちていた。
「唯・・・ほんと、ほんとごめんな」
瞳がわずかに揺れていた気がした。
「・・・なんだよ、文哉。明日美連れてきてんじゃねえよ」
本人とは思えないほど声の低さも口調も違っていた。
「夏樹・・・あのね、「お前は黙ってろ。裏切ったやつの話なんか聞きたかねえんだよ!」
裏切ったってどいうこと・・・?
疑問だらけだった。
「唯、あとで話す。ほんと、ごめん・・・」