恋人ごっこ


 すると、涙を流しながら立ち尽くしていた女の人が文哉を止めた。



 「明日美さん、離してください!」



 明日美さん・・・?



 あたしは全く状況を飲み込めずにいた。
 そして文哉はあたし目を向けた。
 その瞳は怒りと哀しみに満ちていた。


 「唯・・・ほんと、ほんとごめんな」


 瞳がわずかに揺れていた気がした。






 「・・・なんだよ、文哉。明日美連れてきてんじゃねえよ」


 本人とは思えないほど声の低さも口調も違っていた。




 「夏樹・・・あのね、「お前は黙ってろ。裏切ったやつの話なんか聞きたかねえんだよ!」



 裏切ったってどいうこと・・・?
 疑問だらけだった。





 「唯、あとで話す。ほんと、ごめん・・・」



< 24 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop