こころ と 現実

「それでも、あと半年働くの？」
次の日の朝、珍しく朝食を作って圭介に食べさせながら、私は明るく笑った。
「だって、人事異動が半年後じゃない。そこで辞めれば、他の人に迷惑かからないからね。」
圭介は、ふ～ん・・・と釈然としない表情で、牛乳を飲み干す。
「なんだよなぁ、昨日の加奈子は素直だったのに。」
「うるさいわねっ。」
初めて圭介の前で、泣き言を言った私。
・・・でも、思ったより恥ずかしくなくてすっきりした気持ちだった。
「加奈子は言わないからね、嫌なことや、不安なことがあっても。今回、突然きてよかった♪結構勇気いったんだよね。」
こういわれると、ちょっと恥ずかしい・・・。
というか、遊びに来るのに、どんな勇気が必要なんだっての。
トーストを食べながら、ふんっとそっぽを向く。
「あー、でも半年後に何するか、早めに決めておこうっと。無職じゃ悲しいしね。動いてるの好きだし。」
視線の先に、年間のカレンダーを見つけて呟く。
「半年後？」
「うん。」
圭介の声に、頷く。
圭介は大丈夫、と笑って、鞄から何か取り出して机に置いた。

「半年後、結婚しようね。」

私は目の前の指輪に、頭の中が真っ白になった。