ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
項垂れていた顔が上がり、ぎょろりとした大きな瞳が怜央の顔を直視した。


「…………っ!!」


それは茜の顔ではあるが、茜ではなかった。


真っ青な顔に割かれたような大きな唇。飛び出さんばかりの目玉で怜央の顔を睨みつける。


一瞬、後ずさりすると、茜の顔をしたその女は怜央の身体を掴み、絡みついた。
まずい!と思ったが、もう手遅れだった。


茜の顔をした女の顔は、火傷のように頬がただれ、ついで、身体もどろどろに溶けていった。


そして溶けた身体が大蛇のような白蛇へと変化し、怜央の身体に巻き付いた。


白蛇によって、十字架に磔にされた怜央は、身動きを取ろうとすると逆に締まり、白蛇はやがて固い蝋燭(ろうそく)へと変化し、怜央は完全に動けなくなった。


「ちっ……!」


校庭のど真ん中で十字架に磔にされた怜央は、悔しさに歯を食いしばった。


ヤラれた……! ハメられた!!


そう思った時には時すでに遅く、校庭を見下ろす巨大な時計の秒針の音がやけに耳に響いた。

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