ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「くくくくく……」


静かな校庭に、不気味な笑い声が響き渡った。


誰もいないはずなのに、その笑い声ははっきりと怜央の耳に届いた。


冷たい風が巻き起こる。


小さな竜巻のようなものが地面から起き上がり、竜巻の形が人の形へと変わっていった。


黒いマントで身体を隠し、赤茶色の長い髪を風に揺らしながら男が現れた。


「赤銀……」


怜央は現れた男を睨み付け、その名を呼んだ。


「随分と無様な格好だなあ、神無月怜央」


赤銀は不気味なほど真っ青な顔で瞳をギラつかせながら、音もなく怜央に近付いた。


細長い指で、怜央の顎(あご)を撫でる。


「茜をどこにやった!」


噛みつかんばかりの形相で怜央が叫ぶと、赤銀はゆらゆらと身体を揺らして、おかしそうにくつくつと笑った。


明らかに赤銀の様子がおかしかった。


まるで薬物中毒者のように動きが定まらず、妙にテンションが高かった。
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