ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「それなら……風を起こしてっ!」


赤銀は炎に風穴を作ろうと風を起こしたが、赤銀の属性は火。


風は起こせるが威力は火に数段劣る。


炎に穴を開けるどころか、炎の勢いは増すばかりだった。


そして炎はどんどん距離を縮め、赤銀を取り囲む。


「分かった! もうお前たちに手を出さない!
だから命だけは! 命だけは!」


赤銀の黒マントに火が移り、燃えていく。


「ああ! 止めろ! 止めてくれ!」


赤銀の断末魔の叫び声さえも炎に包まれる。


炎からは手を天にかざし、苦しみ悶える黒い塊が映し出された。


そして悲鳴さえも聞こえなくなり、黒い塊は炭のように小さくなり、やがて煤(すす)となって風に消えていった。
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