ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「母さん、俺の分は用意しなくていい」


「え? どうして?」


キッチンからひょっこり顔を出して真央が言う。


「俺は、親父に話しがあって来たんだ」


レオはヴラドを睨みつけた。


そんなレオに、ヴラドは興味深げな瞳でレオを見た。


「……俺がヴァンパイアだったこと。
親父がヴァンパイア王だったこと。全部黙っていたことは、もう過去のことだから今更責めたって仕方ないと思ってる」


レオの覚悟を決めた低い声に、空気が緊迫した。


真央もバドも黙ってレオとヴラドの様子を見ている。


「でも、俺に断わりもなく茜や……みんなの俺に関する記憶を消したこと。俺は許せない」


「記憶を消さねば騒ぎになる。
お前はもう人間ではないんだ。人間界で暮らすことはできない」


「だからって俺になんの相談もなく勝手に決めるなよ!
魔界の王のことだってそうだ。俺を王にしろだと!? 
自分たちがやりたくないからって俺に押し付けるな!」


「押し付けているわけではない。
お前には王の素質がある。ラシードもそれを分かっているからお前に王になってほしいと思っているんだろう」


「素質!? だったら親父が王に戻ればいいだろ!? 
ヴァンパイアに戻れるのにどうして戻らないんだ。
人間のままだったらあっという間に死ぬんだ。
俺は魔界で、たった一人で、どうやって千年も生きていけっていうんだ!」


ヴラドは何も答えなかった。


レオはヴラドを睨みつけたまま、興奮して肩で息をしていた。
< 183 / 370 >

この作品をシェア

pagetop