ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「そうか? 多くを求めるのは悪いことか?」


「俺は昔から求めんようにしててん。
施設にいる時は両親がいる子を羨ましく思ってしまっていたからな。
求めなければ寂しい想いをしなくて済むやろ」


「見かけによらず……苦労してきたんだな」


「見かけによらずってなんやねん!
つか苦労なんてしてへん! 
俺はいつでも楽観主義の幸せ者や!」


そう叫ぶと日向は一段と速く駆け出した。


レオは振り落とされないように必死で日向にしがみついた。


人間でいた頃の記憶がなくなっていくのは、想像以上に寂しいことなのかもしれない。思い出が大切なものであればあるほど。


レオは、涙を流しながらショックで立ちすくむ真央の顔を思い出していた。


それでもまだ、怜央を魔界の王にさせて、自分たちは人間のまま気楽に生きて、早々と死んでしまおうとしているヴラドと真央を許せる気にはなれなかった。

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