ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
王宮内に入り、日向は真っ直ぐに目的の場所に向かっていく。


沢山の部屋を通り過ぎ、何度も曲がり、階段を登ってようやく目的の部屋まで辿り着いたようだった。


方向感覚に優れ記憶力のいいレオでさえも、もう一度同じ道を通って来いと言われたら迷ってしまうかもしれない。


それくらい王宮内は広かった。


「入るで~」


ノックもせずに王の室に入っていく日向。


いつもこんな調子なのかと呆れた。


「あれ、おらんな」


沢山の書類や本で囲まれたその室には誰もいなかった。


大きく立派な椅子が、主人の帰りを持ちわびるかのように冷たくなっていた。


「ここにおらんってことは、あそこかな」


日向は顎に手をやり、独り言のように呟いた。


「あそこって?」


「秘密の部屋や。絶対誰にも言ったらあかんぞ」


レオは黙って頷くと、再び日向の後に続いていった。

< 214 / 370 >

この作品をシェア

pagetop