ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
假屋崎は嬉しそうに微笑むと、少し照れくさそうに唇を開いた。


「茜」


名前を呼ばれた瞬間、茜は固まった。


何かを思い出しそうな気がした。


(私はいつも誰かに茜と呼ばれていた……)


そう感じると、胸の奥から熱いマグマのようなものが溢れてきて、茜は立ち止まったまま身体中が震え出した。


「茜?」


假屋崎が心配そうに茜の名を呼ぶ。


「ねえ、秀平君。
最近何かおかしいと思わない? 
何かを忘れているような。
とても大事なこと。
とてもとても大事なこと。
世の中がおかしくなっているような、知らない世界に紛れ込んでしまってるような。
私が私じゃなくて。
ここがここじゃなくて。
上手く説明できないんだけど、なんか違う。
何かがおかしい。
そんな気がしない?」
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