ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
茜は一気に早口でまくしたてた。


感情が高ぶって、抑えることができない。


大切な何か。


私の大切な何かが剥ぎ取られてしまった。


茜は両手で口を押えて泣き出した。


自分の身体の中から、悲しみや失望が溢れ出して、止められなくなりそうだった。


茜の身体の奥底で、誰かの名前を呼んでいる。


声を枯らして、泣き叫びながら、誰かを探している。


涙が止まらなかった。


辛くて、悲しくて、寂しくて死んでしまいそうだった。


すると、假屋崎に優しく抱き寄せられた。


假屋崎の大きな胸が、茜の身体を包み込む。


「大丈夫。何も忘れていない。
茜は何も変わっていない」


假屋崎にそう言われると、そうなのかなという気になってきた。


抱きしめられると、熱いマグマのようなものが沈静化していった。


再び、記憶の蓋を閉じられるように。
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