ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
レオの瞳が小さく揺れる。


けれどもそんな些細な変化に気付く者は誰もいなかった。


レオが空席に腰をかけると、茜は思い切って話しかけることにした。


「よろしく、神無月君」


茜は自分の胸の鼓動を必死に抑えながら、感じよくにっこりと笑ったつもりだった。


けれどレオは、茜の言葉を聞くと悲しそうな表情を一瞬浮かべ、ぷいっと横を向いた。


どうしてそんな態度を取るのか、茜には皆目見当(かいもくけんとう)もつかなかった。


何か気に障るようなことを言ってしまっただろうか。


それとも、笑顔がぎこちなかったのだろうか。


茜はレオの態度に傷つき、しょんぼりと項垂(うなだ)れた。
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