ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「気にせんでええよ」


その静寂を破ったのは日向だった。


ショックで落ち込む茜に、日向は優しく言った。


「なんか、感じ悪い奴ですね」


假屋崎が、眼鏡の縁を中指で持ち上げながら言った。


日向が茜の背中を優しくポンポンと叩いた。


潤んだ瞳で日向を見上げると、日向はとても優しい笑顔で茜を見下ろしていた。


……こんな優しい笑顔、初めてみた。


日向の側にいると、なんだかじんわりと温かい気持ちになれた。


それは怜央と一緒にいる時では味わえない感覚だった。


「虫の居所が悪かったんやろ」


日向が茜の肩に手をまわした。


……そうだったのかな?


でも、怜央ちゃんの様子、明らかにおかしかった。



茜は最近、度々嫌な予感に襲われた。



今回もどこから湧いてきたのか、不安が押し寄せて苦しくなる。



……怜央ちゃん。



心の中で呟いた名前は、誰の耳にも入らずに冷たい音楽室に沈んでいった。

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