蹴球魂!!!!
「「準備出来たぞー!!蹴ってこーい!!!!」」

「「っ…!?!?」」

「よぉ♪」


先輩たちの声に顔を上げると、キーパーグローブをして立っていたのは、3年生のGKの先輩だった。


「来ちゃった☆」


まるで、彼氏の家に勝手に来た彼女のように、声のトーンを上げて話す先輩。

いや、面白いよ、うん。


でも笑えないっすよ…!?


そんな事お構いなしとでも言うかのように、パンパンと手を叩いて超乗り気。

…なんで3年生が出てくるんだー!!!!


「ま、とりあえず打ってこい♪」


ノリノリだし。

まぁ…やるしかない、か……。


「楠木 円、行きます!!」


意を決して左手をスっと挙げると、GKの先輩がニヤッと笑った。

こ、怖ぇぇぇ!!!!

って、駄目駄目!!!!こんな弱気じゃ試合になんか勝てないもん。


ートンッ


少しだけクルクルと手でボールを持ち上げてから、先輩に指示された場所にボールをセットする。

そこから4、5歩後ろに下がって、ゴールを見据える。


あたしの位置は、ゴールから右斜め45度の位置。一番得意なコース。

壁はあたしの目の前に並んでいて、壁の間に出来てる隙間から、表情が一変したGKの先輩があたしを見ていた。


“ここに打ってこい”

と挑発でもするかのように。


…スウッと深く息を吸って、あたしは助走を始めた。
< 275 / 394 >

この作品をシェア

pagetop