蹴球魂!!!!
「聞いてないよ…」

「そりゃそうだよ。森ちんは、その事をまーちんに知られるのを一番嫌がってたんだから」

「なんで…っ!?」

「そんなの簡単っしょ??自分の怪我を知ったまーちんが悲しむ姿を見たくないからに決まってるじゃん」

「でもっ…後で知った方が辛いよ…」


今知るんじゃなくて、あの日に知らせてくれたなら。

あの時も、あの時も。

飛鳥がキツそうな時に、すぐに止めさせられたのに。


「隣高との試合だって、止めたのに…!!」

「円、それは違ぇんじゃねーの??」

「え??」

「飛鳥は、お前に心配されたくなかったし、ちゃんと試合で奴らに“借り”を返したかった…俊介、違うか??」

「さすが晃ちん。大正解ー☆」


“お前に心配されたくなかった”


「つまり、飛鳥はお前と対等な関係を続けたかっただけなんだよ。心配して、自分のせいで悲しんでるお前を見たくなかった」


“悲しんでるお前を見たくなかった”


「森ちんはずっと…死ぬまで怪我の事を隠すつもりだったみたいだよ??…って、そんなの無理だったけどね」


“死ぬまで怪我の事を隠すつもりだった”


「円を守りたかったらって…飛鳥は10番の奴に、何て脅されたんだよ??」

「え…そ、それ聞いちゃうの??」

「当たり前だろ」

「当たり前なんだ…」

「で、こいつは何をされそうだったんだよ??」


あたしも放心状態で俊介を見た。

ごくっと唾を飲み込む音がして、ゆっくりと俊介の口が動いた。


それはまるで、スローモーションのようだった。
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