蹴球魂!!!!

ホイッスルと共に大きくなる歓声。

相手のキックオフで試合が始まった。


「晃汰!」

「飛鳥ナイスカット!」


だけどすぐに相手のパスミスを飛鳥がカットして、強烈なスルーパスが晃汰へ。

パスを受けた晃汰は大輔先輩とワンツーでどんどん上がっていく。


唯斗先輩があたしをチラッと見た。

その目は“来るよ”って言っているかのようだった。

パスが来るんだ、あたしの元に。

皆の期待がかかった、ピッチ上にたった1つだけのボール。

「円!!」

それが今、あたしへ。


―ドクンッ


心臓はバクバクで、だけど怖くない。むしろ楽しい!!

このボールはあたしが決めたい。

皆の想いが込もったこのボールを、あたしが。


キィン…と集中力が高まるのがよくわかる。

だんだん周りの景色がスローモーションになっていって、周りの動きがよく見える。


…あそこが穴だ。


相手の中にわずかな隙を見つけたら、まっすぐそこへ。

「っ」

相手が一瞬構えに入った時に、ヒールリフトでボールを相手の頭の上を通す。


やばい、今日めっちゃ調子いいぞ!?


「円行けー!!」

「弾丸ぶっ放せー!!」

「相手ごと蹴散らせー!!」


皆は言いたい放題言ってくれちゃうし…。

晃汰なんて仁王立ちしてるし!!


…でも、そんな所にボールは戻させない。


「来いっ」

相手の声に顔を上げると、ガタイの良いDFが待ち構えていた。

けど、今は何も怖くない。

だって全部見えるから。


「足元がお留守ですよっと」

軽く皮肉って、相手の足の間にボールを通す。


ゴール手前に来て、あたしのマークは2人になった。


さすがに2人はキツい…って!!

唯斗先輩フリーじゃん!!


あたしのマークはもちろん、GKまでもが唯斗先輩を見ちゃいない。

…よし、あたしの個人技なんかより点取る方が大事だよね。


「ほ!!」

いつも以上に足を大きく振り上げて声を出したら、マーク2人とGKの肩がピクッと動いた。

…あたしのシュートに対して構えた証拠!!


「唯斗先輩っ!!」

「「っ!?!?」」