蹴球魂!!!!
ーズキン…


思い出すだけで、胸が苦しくなる。心が痛くなる。

「はぁ…」

あの時、“あたしは鈴木さんじゃありません!!”って言えばよかった。

あの時、もっと早く逃げておけばよかった。


…出てくるのは、後悔ばかり。今後悔したって、あたしのファーストキスは返って来ないのに……。


「円、どうしたのー??さっきから溜息ばっかりだよ??」

「なっ…何でもない、何でもない!!」


言いたいけど、言えないよ。

“ファーストキスを、見知らぬ誰かに取られました”なんて、言われたって胡桃が困るだけだもん…。


「もしかして…恋のお悩み??」

小声でそう囁いてきた胡桃。そうと言えばそうだけど…。

「えぇ!?違…」

“違うよー”と言いかけて、あたしは気付いた。


「胡桃、実はね…??」


あたしは、キスの事よりも胡桃に言わなきゃいけない事があった。


「何々ーっ!?」

「あたしね、多分…本当に晃汰が好きだと思う」

「嘘ーっ!!!!嬉しー……ん??多分…!?」


だってまだ、わかんないんだもん。恋って何なのか、好きって何なのか…。

この感情が恋なのか、胡桃に教えてもらいたい。


「…電話で言ってたやつだよね??じゃあ、理由教えて??」


…ゔ。

普段ケンカばっかりしてる晃汰が好きになった理由なんて、わかんないよ。

しかも晃汰は、きっと…いや、絶対あたしの事嫌ってるし!!


「円!!言いなさいっ!!」

「わ…わかんない……です」


胡桃の迫力に負けて、あたしは白状した。
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