苺花(イチカ)
一花 「出逢い」

二人の少女

もし、世界が狭くて
小さな庭(ばしょ)だったなら。 ″出会い″が″奇跡″なんて、想像することすらできなかった
だろう。

だから、これは奇跡。

君と出会ったことで初めて感じた思いだから。


君も同じ?


じゃあ、一緒に始めようか。

新しい物語をー








20XX年 初春
〈ピンポンパンポーン〉
人気のない駅に、アナウンスが響く。
〈間もなく、2番線 苺華山(イチカヤマ)行き、発車いたします。
乗車するお客様はー〉

発車の合図をしても、
駅内は静まったままだ。

その代わりとばかりに、ただ春の陽光が差しこんでいる。


運転席に立った車掌は、
辺りに人がいないことを確認し、次いで機械を操作した。
発車の呼びかけをする。

〈え〜それでは、14時25分発、苺華山行き 発車いたします〉

無線を置き、まさに扉を
閉めようとしたその瞬間、

「すみません!乗ります!」
…女の子の声がした。

見ると、先ほどまで無人
だった入り口に、女の子が立っている。
慌てて扉を開くと、おずおずと中に入ってきた。



高校生くらいの女の子である。 旅行でもするのだろうか、手には大きなかばんをひいていた。


少女は一言謝ると、入り口近くの席に座った。


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