苺花(イチカ)


(はぁ…危なかった 乗り遅れるとこだったよ… )

思って、ほっとする。

広々とした車内には、数人の人影しかない。


(お母さんってば発車の時間、まちがえてるんだもん…ただでさえ 本数少ないのに…)
ため息をつく。

実際、先ほどから何度か駅に止まっているが、人が出入りする姿を見かけていない。

少なすぎる気もするが、
何せ山奥へ向かう列車だ、そう考えれば特に珍しくはないように思えた。





少女は本を取り出す。
ページを開くと、しおりが挟まれていた。

(…″出会い″は″奇跡″、か…)



(そういうのって、普通に暮らしてて思うこと あるのかなぁ?

一体これを書いた人は、
どんな″出会い″をしたんだろう…?)


読み終えて本を閉じると、裏に作者の名前が見えた。


ー月風 彩。




(つき…かぜ、 あや…)
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