僕の脳の痛い部分
僕からみた現実
人間は常に目を開けて生きている。脳内に電気信号としてやってくる色の洪水を僕たちは目の前として認識しているのだ。僕たちは常に極彩に埋もれている。物質というかたちある感触ではなく、僕たちは、色という抽象的な表情に囲まれているのだ。そうしたら彼はじゃあ僕も色筆でかかれただけの存在なんだね、と妙に納得した声で肯定してくるから、ちょっぴり心配をした。案の定、次の日彼は一色になっていた。彼が、健康的な肌色や赤色、水泳をしていたから塩素で抜けてしまった髪の茶色‥他にもスポーツマンらしい健全な色をたくさん持っていた彼が、一色になっていた。それは、彼のその赤い唇よりも色黒い、‥。彼の生きてきた経過の中で初めて太陽に晒されたその色は、太陽の輝きに照る方法を知らず、まるでその暖かさを拒絶するように、その色の美しさを失くしていく。僕たちは、所詮、色の塊だ。僕たちは視線で人間の存在を確信している。それには、真っ暗な、脳という未知なる世界にも映える色の極彩が必要だ。モノクロでは、人間の記憶は薄くなる。彼は今、僕のその脳に突如として現れた異端だった。双眸という器官を鈍器で突いた様な重たい衝撃、目から脳までの一瞬の電気の道のりが一気に開かれて、痛い、という言葉を発する前に僕の脳はその一色で爆発したように染まる。視界が一挙にして記憶を抉る。事実を掘る。外堀を真実で埋めて、そうして内に、ようやく訪れた爆発の反動が積み上げられていく。僕は色のない音という認識方法である叫びをあげた。器官である喉が張り裂けて、口ではなく、そこから声があらわれている感覚がする。脳が‥一色に泣く。‥赤い赤い赤い赤い赤い赤い赤い‥疑いようのない‥真実。そうして、責め立ててくる。脳がまた真っ暗に冷静になっていくその中で、黒く色を失くしていく彼の一色が、声をあげたきがした。君の世界は色を塗った薄い白画用紙なのかい、。違うよ、言えなかった。だって僕は今も、真実を口に出せていない。色と認識することでしか僕は世界と立ち向かえない。かたちある現実は、僕の脊中の後に立っている。振り向けない。