【短】恋ごころ
「ごめん…」
ポツンと出た声はすごく小さくていかにも消えそうだった。
タクヤにとって、あたしは何なんだろうか…
「つか、どした?」
俯いて髪を乱暴に掻くあたしは一息吐く。
覗き込むようにタクヤの顔が目の前に表れ、あたしはスッと視線を逸らした。
「何でもない。疲れたから帰る」
「送っから」
「だからいいっていってんじゃん!!」
つい張り上げてしまった声にハッとした。
目の前のタクヤはめんどくさそうにあたしを見る。その視線を素早く逸らして足を進めるあたしの背後から、
「勝手にしろ」
低いタクヤの声が背後から突き刺した。
その声に思わず顔を顰めてしまった。
別にタクヤが悪いわけでも何でもない。ただの嫉妬。ただ、あたしに振り向いてもらえないって言うムカつき。
ほんとに情けないな、あたし。
タクヤからすればホントあたしが怒ってる理由なんて訳分かんないだろう。
だけど、タクヤに突っかかるあたしはゴメンすら言えなかった。
その後はもう駆け足で家まで帰った。シャワーを浴びて何も考えたくないあたしはすぐに眠りについた。