【短】恋ごころ

「おはよ」


週末の土日を挟んだ月曜日。

教室に入って椅子に座るあたしに沙耶(さや)は声を掛ける。

あたしの唯一の友達。


「あー…おはよ」

「何、何ー。そんな浮かない顔して」


そう言った沙耶はクスクス笑みを漏らしあたしの顔を除きこむ。


「別に…」


素っ気なく返すあたしに沙耶は笑みを消すことなく笑い続ける。


「もしかして恋の悩みとか?」


そう言われてあたしの目が一瞬にして泳いだのは確かだった。

恋の悩み?これって恋の悩みなんだろうか。それさえも曖昧だ。


「別にそんなんじゃないよ。ってか、沙耶はいいよね。彼氏とラブラブじゃん」

「あー、もう別れたよ」

「は?」


思わずあたしは目を見開く。

瞬きさえも忘れて呆然と目の前に居る沙耶を見つめた。沙耶はあたしの前の席の椅子を引っ張り腰を下ろす。


“あー、もう別れたよ”

って、今までずっとラブラブだったじゃん!!


なのに何でそんなに普通にしてんの?



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