【短】恋ごころ
「あ、それよかさ。2組のイズミって居るじゃん」
「あーうん」
誰とでもホイホイ、ヤってるって言う子だ。
「昨日さ、たまたまコンビニに行った時に見たんだけど、また新しい男と居たよ」
「へー、そうなんだ」
別に、そんなの興味ない。
「明日美は絶対知ってると思う。この辺じゃカナリの有名だし明日美と同じ中学だから。怖いって言う噂、カナリ飛び交ってるしさ」
“ほら、タクヤって言ったっけ?”
付け加えられた言葉に息が止まりそうだった。
まさか、まさか沙耶の口からタクヤの名前が出るなんて思ってもみなかった。
人違いだとも思ったけど、考えてみてもあたしの知っているタクヤしか居なかった。
“有名”“悪”“あたしと同じ学校”
そんな三拍子も揃ってると、もうあのタクヤしか居ないじゃん。
つか、タクヤがイズミと?
何で?何でなの?
タクヤとイズミの接点なんて何もないじゃん。中学だって違うし…
タクヤはイズミと何してたの?
「おーい、ちょっと聞いてんの?明日美ってば!!」
「あっ、」
あまりの沙耶の弾けた声に身体がビクンとする。
呼吸を整えようと小さく深呼吸をしたあたしは目の前の沙耶に視線を向けた。