【短】恋ごころ
もし、タクヤがイズミとヤってたらどうしょう。なんて事を考えてしまった。
そんな事が実際起こってんなら凄く凄く嫌で心ん中が張り裂けそうだった。
べつにあたしはタクヤの女でも何もないのに何故かイズミを許せないって思ってしまった。
浮気されてる訳でも何もないのに。でも何故かタクヤを取られたって思ってしまった。
こんなにこんなに悩んでるあたしって馬鹿なんだろうか。
浮気されて別れた沙耶なんて、もう吹っ切ったって感じで爽やかなのに何であたし彼氏でもない男の事でいちいち悩んでんだろうか。
何でこんなにモヤモヤしてんだろうか。
そんなモヤモヤが続いてタクヤとも連絡を取らずに1週間が過ぎた頃だった。
丁度、あたしが帰ろうとして下駄箱に辿り着いた時だった。
「つかバリかっこいーんだよ。あのタクヤって人」
さっさと靴に履き替えて帰ろうとしたあたしは、その話し声で一気に足が佇んでしまった。
思わず顔を下駄箱から覗かせると、靴に履き替えたばかりであろうイズミが、友達と笑ってた。
「でも、怖くない?」
「まぁ、この辺じゃカナリの悪だもんね」
「だから怖いじゃん」
「けど、そんな感じあまりなかったけど。つか、直接見たらバリかっこいーんだって。ヤバイよ?」
「つか、もしかしてヤった?」
友達のケラケラ笑う声に、思わずドキンって心臓が飛び跳ねた。
聞きたくない。でも聞きたい。曖昧な自分が何だかムカつく。