【短】恋ごころ

「まだまだ」

「あれ?イズミらしくないじゃん」

「何それ」

「いつもなら簡単に引っ掛けんのに」

「今まではね。けど、あまりのカッコよさに出来ないっつーか、会って即行嫌らしいじゃん」

「よく言うーよ」

「けど、絶対あたしのもんにするから」


会話しながら遠ざかって行く二人を顔を顰めながらずっと見てた。

嫌な会話。思わず聞いてしまった最低な会話。


何か気分悪い。吐きそう…。


重い足取りを進めてあたしは学校を後にする。

もうタクヤと係わるのも止めようかな…って何となく考えたりもした時だった。


「明日美ちゃーん!!」


弾けた声に釣られて視線を前方に向けると、自転車に跨って大きく手を振っているトシが居た。

トシは所謂、タクヤの遊び仲間の一人。あたしともタクヤとも学校は違うけど、タクヤとは仲がいい。

思わず見てしまった瞬間、顔が引きつってしまった。出会った事にいいことはない。


「今帰り?」


あたしを見てすぐ自転車のペダルを漕いで傍まで来たトシはそう声を掛ける。




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