【短】恋ごころ
「あ、うん」
「暇だったら一緒に遊ぶ?」
“ほら、タクヤも居るし”
付け加えられた言葉にまた顔が引きつってしまった。
トシが指差す方向を見ると、自動販売機から取り出したであろう缶を開けて口に含んでいくタクヤを目で捉える。
最悪。ってか今は会いたくないんだけど。
あの日以来タクヤと会ってもいないし連絡すらとってない。
会いたい日にはなかなか会えないのに、こんな会いたくない日に限って会ってしまう。ほんと運悪いよな、あたし…。
「ねぇ、明日美ちゃん。聞いてる?」
顔の前でブンブンと手を振られたあたしはハッとして、視線をトシに向ける。
「あ、いや。よ、用事があるから」
ぎこちなく返した言葉にトシは残念そうな顔をする。
そ、そんな顔されてもな…
「そっか、なら仕方ないよな」
「ご、ごめんね」
そう言って足を一歩後ろに引いた時だった。
一瞬だけ数メートル先に居るタクヤと目が合ってしまった。あたしに気づいたタクヤは身構える様にあたしに視線を送ってた。
だけど、その視線を避けたあたしは急いでこの場を離れた。