【短】恋ごころ
「じゃーね、明日美ちゃーん」
背後から叫んだトシの声が聞こえる。
つか、あたしの名前叫ばないでよ!!
今更思うと急いで帰ってしまったあたしを絶対にタクヤは不思議に思ってる。
1週間も連絡しないって事はたまにあるけど、あの日あたしが怒って帰ってしまってから今日。また、避けるように帰ってしまったから絶対タクヤは何か思ってる。
そんな視線だった。そんなふうに何かを言いたそうにあたしを目で捕らえてた。
今更ながらに思う。
避けるんじゃなかったって。避け過ぎたら今度会う時が気まずい…
どうして避けた。なんて言われれば終わりだ。どう答えていいのかも分かんない。
そんな事を考えながらベッドで寝転んでいる時だった。
静かな部屋に鳴り響く携帯にあたしの心臓がドクンって鳴った。
ベッドの上で寝転んだまま床に置いている鞄に手を伸ばす。その鞄を引っ張って、中からレインボーに光っている携帯を取り出した。
「えっ…」
取り出して画面を見た途端、思わず顔が引きつる。
画面に映し出される“タクヤ”の文字に躊躇してしまった。と、言うよりもそんなの出れる訳がない。
あんな避けるように帰ったあたしがそう簡単に出れる訳がない。
だって言う事なんて何も考えてないもん。