【短】恋ごころ

しつこく鳴り続けている携帯の画面を暫く見てた。

早く切ってほしいって思ってる時に限って、なかなか切れない。


ほんと、しつこい。


何度か通話ボタンに触れたけど、やっぱりボタンを押す事なんて出来なかった。

あまりにも長く鳴り響いていた着信音がプツリと切れた時には思わず安堵のため息なんかが出てしまった。


「長すぎ…」


そう小さく呟いてすぐ、また鳴りだす携帯にドキンとして一瞬携帯を落としそうになった。

だけど着信はすぐに切れ、さっきの音と違う事にメールだってすぐに理解した。


画面に映し出されるメールのマークを開けた途端、やけに心臓が早く打ち付ける。

また現われたタクヤって文字にあたしは息をのみ込む。


恐る恐るメールの文章に目を向けると、


“出ろ”


たった2文字の文字に顔を思わず顰めてしまった。


やっぱバレてる。あたしが避けた変な行動はとっくにバレてた。そりゃ、そうだよね。あんなイライラして突き放した挙句、今日は避けて帰ったんだし…。

タクヤがなんかを思うのもあたりまえか。


つーか、彼女でも何でもないんだからほっとけっつーの!!


“出ろ”って言われて出る様なあたしじゃない。だからと言って掛けたりしない。

だって、マジで話す事ないんだもん。


深く追求されたら困るじゃん。
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