【短】恋ごころ

「良かった」


そう言ってリオさんは微笑む。


「あの…」


“何か?”って言おうとした時だった。

スッとリオさんの手から差し出された真っ赤な傘。


その傘からリオさんに向けると、


「傘、使って」


リオさんはさっきよりも傘をあたしに差し出した。


「えっ?」

「傘、無いんでしょ?これ使って?」

「いや、でも…」

「いいよ。あたしは大丈夫だから」


“ほら”

付け加えられた言葉と同時にリオさんは自分の真上に指差す。


見上げる先はリオさんと一緒に居るカケルくんが差す傘。


「でも…」

「いつ止むか分かんねぇよ」


悩むあたしにカケルくんは口を挟む。


< 26 / 72 >

この作品をシェア

pagetop