【短】恋ごころ
「良かった」
そう言ってリオさんは微笑む。
「あの…」
“何か?”って言おうとした時だった。
スッとリオさんの手から差し出された真っ赤な傘。
その傘からリオさんに向けると、
「傘、使って」
リオさんはさっきよりも傘をあたしに差し出した。
「えっ?」
「傘、無いんでしょ?これ使って?」
「いや、でも…」
「いいよ。あたしは大丈夫だから」
“ほら”
付け加えられた言葉と同時にリオさんは自分の真上に指差す。
見上げる先はリオさんと一緒に居るカケルくんが差す傘。
「でも…」
「いつ止むか分かんねぇよ」
悩むあたしにカケルくんは口を挟む。