【短】恋ごころ
リオさんから傘を借りて1週間。
返さなくてもいいって言われたけど、実際毎日見てると何だか返さなくちゃいけないような気がしてきた。
でも、返す手段なんてない。
出会う事もないんだから…
やっぱ、貰うって事にあたしはしっくりこなかった。
学校に行くときも、帰ってきてからも、ずっとずっと真っ赤な傘に目がいってしまう。
だから返そうと思った。気になって気になってするくらいなら返そうと思った。
その手段はたった一つ。
…タクヤだった。
それにタクヤに言っときたい事があった。どーしても言いたい事があった。だってこのままじゃ、ホントにあたしがダメになっちゃう様な気がして…
学校から帰ったあたしはとりあえず汗ばんだ身体をシャワーで荒い流し私服に身を包む。
玄関の傘立てにある真っ赤な傘を手に取り、あたしはタクヤの家まで向かった。
ピンポーンって鳴る音を耳にしながらあたしはため息を吐き捨てる。この時間にタクヤが居ないって事も分かってたけど、もしかしたらって言う確信で来た。
だけど、何度鳴らしても家からの応答は何もなかった。