【短】恋ごころ
ぶっちゃけ、このまま傘を置いて帰っちゃおうか…なんて事も考えたけど、馬鹿なあたしはその場に立ち尽くしてた。
タクヤの声を聞いた途端、足が佇んでしまったのは気の所為だろうか。
持っていた携帯を片手でパチンと閉じ、それを無造作に鞄の中に突っ込む。
手に持っている真っ赤な傘をあたしは、ジッと見つめた。
正直に言えば、あたしは馬鹿。だってこの傘を返す為にはタクヤはリオさんと会わなくちゃいけない。
あたしがタクヤとリオさんを会わせているようなもん。
Γ馬鹿じゃん、あたし…」
口から零れ落ちるため息は呆れた感じ。
会わせてどーすんのよ!
「明日美」
暫く経って不意に聞こえた声にあたしは顔を上げる。
制服を着たタクヤは相当急いだのか息を切らし、自転車を止める。
「暑っつ、」
そう声を漏らしタクヤは顔を顰めた。
「ごめん、急に。あのさ、」
「つか俺の部屋行ってて」
「え?」
「暑い。シャワー浴びっから」
タクヤはスタスタと先を進み玄関を開ける。