【短】恋ごころ
「ちょ、タクヤ?」
「早く入れって。後で聞くから」
タクヤの背後に声を掛けたものの、タクヤはダルそうにあたしに視線を送る。
その視線が早くしろって感じの視線で、あたしは思わずため息を吐き捨て家の中に足を踏み入れた。
「あのさ、」
そう声を出したもののタクヤには届いていなかったみたいでタクヤは風呂場に向かう。
「どうしょっか…」
一方的なタクヤ。
まぁ、でもあたしもタクヤを避けたのには変わりない。
あたしの方が最悪か。
手に持っている真っ赤な傘を靴箱に掛け、あたしは先にタクヤの部屋へと入る。
床にペタンと座り込んで、別に興味はないけどテーブルに置いてあったバイクの雑誌をペラペラ捲って見てた。
暫くすると階段を駆け上がってくる足音が聞こえたと思うと、すぐにドアが開き上半身裸のタクヤが目に入る。
「はい」
差し出されたオレンジの缶ジュースを受け取る。
「ありがと…」
受け取ったオレンジを開け、あたしは喉を潤した。