【短】恋ごころ
「好き…だった」
どれくらい沈黙が続いたのかも分かんない頃だった。
ポツリとタクヤが呟いたのは過去形の言葉。
「…だった?」
「あぁ」
「あの人…リオさんと一緒に居た男の人ってリオさんの彼氏?」
「あぁ」
「だからなの?」
「何が?」
「タクヤが諦めた理由」
「そう言うんじゃねぇーけど。アイツに俺は必要ねぇって思っただけ。今は何の感情もねぇよ」
「……」
「つか明日美は何が言いたい?」
タクヤは顔を顰めたままタバコを咥えてて、あたしを身構える。
一瞬でもリオさんが好きって思っていながらも、あたしと寝てたタクヤ。
つか、切ない。
そういや沙耶が言ってたな。男は女が誘ってきたら寝るって。
でもまぁ、それに少しは承諾して寝てたのはあたしだ。
どっちもどっちか。